販売のきっかけ

2013.11.09(Sat)

私には、長年の釣り友がいます。




今から26年前、仕事の関係でお会いしたのが初めて。
お互いに釣りをする事がわかり、話をしているうちに、意気投合したのでした。

と言っても、歳は親子ほども離れています。

彼は大正14年生まれ。
お会いした時、私は23歳、彼は63歳でした。

彼は若い時、とある世界的有名メーカーの工場長を務めていました。

ライバルを蹴落とす、今では考えられない様子を、酒を飲みながら話してくれたものです。
日本の高度成長期の裏を垣間見たような気がしました。

彼は海釣り専門で、特にチヌ釣りが得意でした。

堤防から、まるでヘラのように細長いウキで、イモダンゴの宙吊りで釣ったり、ダンゴを底に這わせて釣ったりします。

何度一緒に行っても、回りの人の倍以上を釣り上げます。

その地域の常連さんには、有名な人でした。

私は彼にチヌ釣りを教えてもらい、釣りだけではなく、食事や飲みにも連れて行ってもらっていました。

そのうちなんとか同等の釣果を時々出せるようになり、お互いに暇を見つけては、電話で「今度いつ行く?」と連絡し合っていました。

その時、竿かけに不自由して創ったのが、「楽竿」です。
もちろん、改良の繰り返しですから、今の形になるまでには、かなりの年月がかかっています。

時々、彼に使ってもらっては、意見をもらう・・・そんな繰り返しでした。

ある時、「もうこれでいいよ。 1台作ってくれ。」

と言われ、作ってあげたのですが、現在の数世代前の未完成バージョンです。

新しいのを作っても、「これでいいから」と言って、受け取りません。

頑固一徹の人ですから、何か感じるものがあったのかもしれません。


そのうち、私の仕事が忙しくなり、国内外の出張が激増。
1か月のうち、家に1週間、ひどい時は3日もいないくらいになりました。

当然、釣りどころではありません。

彼との釣行もなくなりましたが、お互いに電話で「この間どうだった?」とか「今、何が釣れてる?」という連絡だけはしており、なんとか1年に1回は、一緒に釣りに出かけたものです。

歳も歳なので、病気で入院する事も度々あり、豪快だった人が、優しい感じになってきました。


数年前、釣りに行った時、少し弱った体で、

「昌裕君なぁ~、俺、これがないと、もう釣りができないんだよ。」

と言われた時は、ショックでした。

「これ」とは、私が作ってあげた楽竿です。

握り締めながら、しみじみと言われた時、私は言葉が出ませんでした。

常々「もう釣りしか、やる事がない」と言っていた彼が、未完成のバージョンを、ずっと使い続けてくれているのです。

体は弱り、竿などはずっと持っていられず、反射神経も衰えている。

それでも、これがあるから、釣りができていると言うのです。

私の創った楽竿が、彼に生き甲斐である釣りを続けさせているかと思うと、うまく説明できませんが、胸が詰まりました。


その時です。これを販売しようと思ったのは。

人の役に立つものであるならば、また、私にその助けができるならば、素晴らしい事ではないか。

販売する意味があると思ったのです。


しばらくして彼に相談すると、ぜひそうしなさいと背中を押されました。 絶対に必要としてくれる人がいるからと。

それまでは、自分のための道具作りでしたが、その時から180°の方向転換になったのです。


以上が、楽竿シリーズを販売する事になった経緯です。



彼は東京を離れ、生まれ故郷に帰っています。

前回、彼と行った釣りは、2010年11月17日。
危ないからなぁと、まよう船長に、私がついているからと言ってお願いし、一緒にイカダに乗りました。

kikkake001.jpg

数世代前の楽竿を使用してくれています。

kikkake002.jpg

特に大物を狙っていたわけではなく、サヨリとアジを釣り、一緒に楽しみました。

これ以降、入退院を繰り返したため、私と釣りに行くタイミングが合わずに現在に至っています。



今年の夏、久々に会いに行きました。

前回よりもかなり痩せていて、歩くのも難儀していました。
外出するときは、鼻に管を付けて、酸素ボンベを引いて行くそうです。

腰が痛くて釣りに行けないとの事でした。 同級生は全員亡くなり、訪ね合う人もおらず、釣りに行けないのが一番つらいと言われ、今度来た時、一緒に釣りに行こうと約束し、別れました。

早く行かねば、と気ばかり焦っています。



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COMMENT

久P #-

おはようございます。

久々に食い入るように深い文面に出会いました。

それと言うのも、私が勝手に師と仰ぐ、「南のつり」という雑誌に執筆されている”工藤哲也”先生の「釣り~昔の思い出」を彷彿するかのようでした。

私と同じく、釣研㈱のテスターをされていますが、40年以上も九州の釣りを新聞等で紹介されてきた重鎮です。

釣りブーム創世記から革新的な道具や釣法を世に紹介してきただけでなく、クラブを通して恵まれない子供達への福祉活動(釣り大会)をするなどして知事から表彰されたりしておられます。

高齢となられた現在も精力的に釣りと執筆活動され、その文章はいつもほのぼのと温かく、釣りの原点を垣間見せてくれるかの如くです。

釣り~昔の思い出の文中、故人となられた釣友とのおもいで、エピソードはいつも私自身の幼少期の思い出にオーバーラップして引き入れられてしまいます。

素晴らしい記事を見せて頂き、ありがとうございました。 これからも素晴らしい製品・記事を楽しみにしています。頑張ってください。

2013.11.10(Sun) 04:59 | URL | EDIT

楽竿作者 #5lgk84Pk

久Pさん

久Pさん。
コメントありがとうございます。

趣味というのは、いいものですよね。

お金の絡まない人間関係というのは、人生の宝だと思います。
これからも、一人でも多くの友と呼べる人ができれば、豊かな人生になるのだろうと信じています。

仕事は仕事として、趣味は趣味として、いい人間関係を築きながら生きて行けたらいいですね。

2013.11.11(Mon) 16:54 | URL | EDIT

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プロフィール

楽竿作者

Author:楽竿作者
釣り歴36年だけど、磯は初心者!
房総、伊豆半島、三宅島、八丈島に出かけています。

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